2009年05月31日

五月日記

16冊ほど読んだ。

5/29~31 二転三転する。
5/26~28 はかどらない。「太陽の帝国」を読む。
5/25 「S-Fマガジン09年7月号」を読む。
5/24 「S-Fマガジン09年6月号」を読む。
5/23 「短編ベストコレクション」を読む。
5/21,22 養生。「アッチェレランド」を読む。
5/18~20 漫然。
5/17 「ようこそ青春世界へ!」「昨日のように遠い日」を読む。
5/16 気ままに。
5/15 「鬼と天皇」読了する。
5/12~14 諸々。
5/11 「琥珀捕り」を読む。
5/10 だらだら。
5/9 バイトなど。「サマー/タイム/トラベラー(1,2)」「タイム・スコップ!」を読む。
5/8 雑事。「不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界」を読む。
5/6~7 沈む。「ペンギン・サマー」を読む。
5/5 ぼんやり。「ダンシング・ヴァニティ」読了。
5/4 キャンプ。
5/3 帰路。
5/2 SFセミナー。
5/1 路上。「天使の蝶」を読む。
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2009年05月28日

「太陽の帝国」

J・G・バラード 国書刊行会

上海の外国人租界で暮らすジムは見知らぬ祖国イギリスよりも上海で睨み合う中国と日本に親しみを感じる。太平洋戦争の開戦とともに両親とはぐれたジムは戦時下・収容所という世界に適応していく。

先日お亡くなりになったのでそういえば長編読んだことないし読む。バラード自身の戦争体験をベースにしているらしいので、それを飛行機・彼岸の光・富裕層の廃墟・滅びた世界といったお馴染みのガジェットを使って再構成してみせた感じか。終戦直後の混沌の中、ジムはひたすら自分にとって唯一生きている場所である収容所へ帰ろうとする。それは一人の人間として生きる術を学んだ場所というだけではなく、死を実感した場所でもあるから。海に流された棺と弔いの紙の花が滞留する上海沿岸から始まってループするイメージは純度を高め、死んだ特攻隊の少年兵や行方知れずの両親たちをよみがえらせ、収容所の自分の区画に迎え入れようとする幻想にまで到達する。長かったけど感想としては楽しかった。
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2009年05月26日

「S-Fマガジン09年7月号」

早川書房

劇場版「スター・トレック」公開記念特集/伊藤計劃追悼。
ではあるけれど宇宙大作戦には興味ないので追悼特集号気分。
表紙のひとがよかった。こういうトボケた憂鬱な雰囲気好きだわ。

「屍者の帝国」伊藤計劃
フランケンシュタインによって確立された屍体蘇生技術が隆盛をほこる十九世紀英国、医学生ワトスンはヘルシング教授に見出され諜報機関にスカウトされる。
試書きされた長編の冒頭。物語は始まってすらいない雰囲気だけなのに、とても好みでただ無念。たぶんあとで変えられたんだろうが、非線形制御とか『不気味の谷』とかしれっと使ってしまう無造作さが好きだ。

寄せられた追悼文はどれもハイテンション(とくに円城塔)で喪失感の大きさにただ呆然とするだけなのだけど、佐藤哲也だけ妙に普通でしかも面白い。その上、隣ページの篠房六郎のと掛け合いになってしまっている。なんということ。

「齢の泉」ナンシー・クレス
人生から奪われた恋人の形見を求め、元悪党の大富豪は年甲斐もなく大暴れ。
爺さん元気やなぁ…頭がしゃっきりしてるのはええことだよね。さておき各伏線の回収先が思ったよりこじんまりした感じで、長さの割りにあわない気分。息子に関わる部分の記述は何かくだくだしい。

「無可有郷だより」樺山三英
川を遡り誰も知らない理想郷を探すものたちの断章。
ユートピア連作の五本目。題材の抽出とアレンジがうまいなぁと思う。今回は六つの連結しない掌編六つと枠からなる。しょっぱなの鰻の生態と、水棲の美女を漁る詩人たちの話が印象に残っている。
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2009年05月24日

「S-Fマガジン09年6月号」

早川書房

スプロール・フィクション特集X
もう五回目か。
初回は戸惑ったものだけど今では大体どういったものを紹介したいか解ってきた気がするので結果としてラベルと特集の意味が解らなくなりつつある。普通の読みきりとして載せていけばいいじゃない、妙に多い連載連作の類をちょっと整理してさ。
とりあえず小説はともかく小川隆がアンケートした「SF界における世代を巡る論議」が面白かった。アンケートという形式の常として回答内容そのものより誰がどの質問を重視しているかという差分が重要よね。この論点だと特に。要するに、長文乙>ローゼンバウム

「名高きものども」クリストファー・ロウ
洪水ののち世界が復興するまで眠りに付いたネフィリムたちの話。
聖書ネタを使った愉快話。もう一つくらいでかいネタと変なネタがあれば楽しかったのだけどこれだと安易というか便利なだけのようで物足りぬ。

「蝶の国の女王」ホリー・フィリップス
国外で誘拐された恋人を待つ作家の話。
切実な状況におけるフィクションの力、大抵は子供だったりするのだけどこれは作家自身に向かう。そしてそれを信じきれないというような話か。レトリックが肌にあわなくてちょっと残念な気持ち。

「都市に空いた穴」リチャード・ボウズ
9.11後のNYで、帰ってきた死者たちを目撃する中年。
いや中年よりもうちょっと上なのか? 9.11をあくまで個人的な過去と現在を重ねる契機に使う。でもそれで出てくる話は9.11でゴーストストーリイをやる、という以上にはピンとこない。

「ローズ・エッグ」ジェイ・レイク
EGG(エッグ)と呼ばれる装置を巡るストリートギャングの友情話。
ただそういう話にしか見えない。ベニーはさすがにちょっとイラッと来る系のベタさ。

「星の香り」菅浩江
ビッキーとの契約交渉に赴いた香水メーカーの社員は何故か育ての親のことを思い出す。
ネタとテーマと状況をくくるのが上手いなぁと思う。連作の五作目。大体大枠と流れを見せ始めたのだろうか。小粒気味なのがどう纏まるんだろう。
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「短篇ベストコレクション」

〜現代の小説2008
日本文藝家協会 編

森見と堀のために読んでみた。せっかくなので通して読んでみたが自分の好き嫌いとはいまひとつフックが違う。さすがにつまらなくは無いけどどんどん流れていくような。楽しかったのは「黒豆」「涙腺転換」「弁明」「蝸牛の角」あたり。ある意味で「図書館のにおい」も。
「絹婚式」石田衣良
 夫の女性恐怖症を治そうとする話。だいたいそのまんま。絹とか鋼鉄とかは別に説明しなくても。
「“旅人”を待ちながら」宮部みゆき
 落ちこぼれ魔法学生ココロの試練。ファンタジー世界を舞台にした小話。
「黒豆」諸田玲子
 正月に帰省したOLと、わけありな店子の接触。主人公の思惑からがらっと変わる展開が上手い。
「匂い梅」泡坂妻夫
 紋章上絵師たちの懐旧。まったく馴染みのない素材なので興味深い。
「笑わないロボット」中場利一
 走り屋で兄貴肌な僧侶が預かった友人の子供。これ系の話としてはオーソドックスな大人たちの配置に、現代の子供たちの状況を上手い距離感で継いである。いかにも滑りそうだけど。
「涙腺転換」山田詠美
 母の言いつけを守り涙を堪え続けた少年の悲喜劇。軽快に饒舌な一人称で押し切る愉快話。
「秋の歌」蓮見圭一
 かつて画家を志した男が地元に帰って昔の恋人とかにあったりしてうろうろする。かったりい。
「みんな半分ずつ」唯川恵
 対等に生きてきたはずの夫の裏切りに戸惑うデザイナー。最後が却ってステロタイプな印象。
「雪の降る夜は」桐生典子
 厭世的になった看護士と格好付けな中年が北へ行く人情話。落ちはやりすぎ。
「黄色い冬」藤田宣永
 上司の妻に惹かれた青年と「黄色」の因縁。道具立てがなんか嫌い。ラストへの持っていき方も嫌。
「図書室のにおい」関口尚
 文学少女に憧れる少年の恋そのほか。なんという耳すま。言及される本の選定とかあらゆるレベルでむっずむずする。
「ぶんぶんぶん」大沢在昌
 刑事コンビが護衛することになった漫画家は、神秘家にはまっていた。京極いじり。
「弁明」恩田陸
 劇団を追放され窮状に落ち込んだ女の独白。枠が解けない不安を残す。解らなかったけど面白い。
「五月雨(さみだれ)」桜庭一樹
 ホテルマンが目撃する「殺人鬼」と「狩人」、家族の概念。ジャンルものでないならもっと何も説明しなくていいんじゃないか。
「初鰹」柴田哲孝
 美味しんぼ的薀蓄話。和歌山で食べた初鰹の刺身は美味しかった、という客の呟きの意味とは。まぁそのままの話。
「その日まで」新津きよみ
 時効まで逃げ続ける殺人犯の女とその友人。「意外な落ち」に持っていく流れが何か変。驚けないというか唖然とするというか。
「蝸牛の角」森見登美彦
 阿呆神を巡り連鎖するぼんくらたちの阿呆な姿。こういうの好きだなぁ。
「渦の底で」堀晃
 硬度を持たない奇妙な結晶で覆われた惑星の話。トリニティシリーズ。結論がよく解らない。
「蝉とタイムカプセル」飯野文彦
 既読。(→SFM07.10)
「唇に愛を」小路幸也
 あるバンドの回顧。枠の趣向が中々気が利いているが文体があまり好きじゃない。しかしウルトラマンをイメージした武者鎧って、浅井長政@BASARA……。
「私のたから」高橋克彦
 テレビ番組の出演依頼を受けた私小説風のスタートからB級なノリへスライドしていく愉快話。
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2009年05月21日

「アッチェレランド」

チャールズ・ストロス 早川書房/海外SFノヴェルズ

 常に世間の先を行き、ばら撒く発明のお返しできままに生きる天才肌のギーク、マンフレッド・マックス。彼の元婚約者パメラは国税局の取立人、崩壊しつつある合衆国及び世界を憂え、マンフレッドを社会的・経済的に縛ろうとする保守主義者。二人の対立、あるいは対立する二人は娘とペットロボットに大きな影を落とし、その影は徐々に大きな混沌を太陽系全体に巻き起こしながら子孫へと波及していく。

 というのはとりあえず一面であって、サイバーパンクの子孫として始まりシンギュラリティの到来と共に太陽系開発ものに、そして遠未来ものにと繋がっていく何でもありSF。『スキズマトリックス』ってこういう話だったかなぁ。宇宙人の商人とか出てきたし。
 第一部・始祖、第二部・子、第三部・孫(と曾孫)と言う構成になっているわけだけど普通の「世代もの」と違って抗老化や人格アップロードの技術があるため、登場人物は入れ替わることなく蓄積されていく。各人相互の印象もバラバラな上に変化していくし、各人の世界観・人物観も相対化され続ける。頭の中は最初のマニーvsパメラのハッキリした配置からどんどんグレーのごちょごちょにもつれていく。各パートが長編一本分くらいあるので所要時間的にもしんどく、さらに三分割された章ごと10年時間が飛ぶせいで人間関係の変化に付いて行くので大体精一杯。第一部を読み直したのを若干後悔。こんなにしんどくなるとは思わなかったからな。ただまぁ混乱させられまくったおかげで収束する最終章ではそれなりにカタルシスを感じられた。演出:猫に感謝。二部中盤〜三部中盤がしんどかったなぁ。要するにアンバーがしんどい?
 感想としては何故か第一部が一番面白いような……まだしんどくなかったからだろうか。身近さと突飛さのミスマッチが楽しいからかも知らん。とりあえずロブスターといい、ロブスター人間といい、ナメクジといい、オランウータンといい。ストロスの人のガジェットセンスは変でいいなぁ。
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2009年05月17日

「昨日のように遠い日」

〜少年少女小説選
柴田元幸・編 文藝春秋

面白かったのは「おとぎ話」「猫と鼠」「パン」あたり。

「大洋」バリー・ユアグロー 庭に大洋を発見した弟と父親の軋轢。瞬間で状況を作ってしまう手際がやはりすごい。
「ホルボーン亭」アルトゥーロ・ヴィヴァンテ 子供のころ訪れたイギリスのあるレストランをありありと覚えているが、家族たちには取るに足らないことだったらしい。
「灯台」アルトゥーロ・ヴィヴァンテ イギリスで遊びに行った灯台を一年後も訪れたが、灯台守には自分がわからなかったらしい。二編とも周囲の大人との認識の相違を使って記憶の美化をしているみたいな話かね。
「トルボチュキン教授」ダニイル・ハルムス ここから五編はハルムス。〇五―四二、ソ連のアヴァンギャルド芸術家。雑誌編集部を訪れた教授は様子がおかしかったという話。
「アマデイ・ファラドン」「うそつき」ナンセンス詩歌。
「おとぎ話」 サイレントなスラップスティックを落とし込んだ御伽噺がいちいち楽しい。
「ある男の子に尋ねました」 小咄。
「猫と鼠」スティーヴン・ミルハウザー ミルハウザー式トムとジェリー。ひたすらの描写が不思議な領域へ。でもどこが少年少女小説?
「修道者」マリリン・マクラフリン “拒食症”の少女は祖母に預けられまったりする話。
「パン」レベッカ・ブラウン 寄宿学校のカリスマ「あなた」と私たちのパンをめぐる儀式。
「島」アレクサンダル・ヘモン サラエボからムリェトを訪ねた少年の戸惑い。
「謎」ウォルター・デ・ラ・メア ひとりひとり消えていく子供たち。隠喩のような何か。不穏不穏。

付録
「眠りの国のリトル・ニモ」ウィンザー・マッケイ あちこちでちょっとずつ見る。一冊で通して読んでみたいが。
「ガソリン・アレー」フランク・キング これもそれなりに知られた新聞漫画らしい。
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「ようこそ青春世界へ!」

淺沼広太 一迅社/一迅社文庫

 入学した高校に手芸部が存在しなかったため途方にくれていた双葉薫は、偶然戸を叩いた演劇部に引き込まれる。
 キャラと関係性だけ紹介されて楽しそうなので手に取ってみたのだが、確かにパーツ単位では期待通りであった。大ネタを背負わされた主人公を筆頭に、男子部員のナチュラルな仲良さとか、電波系幼馴染とか、ラフなツンデレさんとかを取り揃え、一応キャラ出落ちではなく部活モノとして正しいネタもある。それが配置の手際の悪さでことごとく裏目ってるのがもったいなく、なのでかくあるべき「ゆるくてまったりな放課後ドタバタ演劇部ラブコメ」(表紙裏紹介文より)に脳内で再構成しておきますね。いやほんと、最初からネタ開陳したうえでダラダラしてたほうがよほどマシなような。
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2009年05月16日

「鬼と天皇」

大和岩雄 白水社

第一章 斉明天皇を殺した鬼
第二章 鬼が「もの」と呼ばれたのはなぜか
第三章 まつろわぬ鬼神とヤマトタケルと天皇
第四章 人を食う「目一つの鬼」と生贄
第五章 女を食う鬼と人身御供
第六章 人を食う鬼と天皇
第七章 天皇の后を犯す鬼
第八章 「おに」の語源と陰陽師と修験者
第九章 鬼と童子と天皇
第十章 鬼・まれびと・荒魂
第十一章 鬼・境界・蓑笠・影


というわけでかなりあっちゃこっちゃ行くので読みにくいし、以前の研究のおさらいも多いし、こまごました民俗モチーフを抽象化するあたりは何かこじつけくさいしそこからの一般化はごり押しくさい。まぁ古典には疎いので色んな史書や拾遺からの引用だけで充分楽しめるのだけど、生霊と怨霊を扱った一章と七章が面白かったかな。以下何を読んでたのか混乱してしまうのでずるずるっとメモをとる。

 古典における「鬼」をおにと読むかものと読むかしこと読むかの議論から始まり、記・紀における天皇と神々の力関係の相違を追って、生贄を求める山の神の習俗から「生と死の儀礼」を押える。次に「天皇の権力」の発露としての鬼と、権力にまつろわぬもの・恨みを持つものとして鬼を読む。謡曲における酒呑童子の描き方から漂泊者である演芸者たちの鬼への共感も見る。第六章まで。
第七章からはそこまでを引き継ぎつつ、惟喬親王の護持僧である柿本僧正真済が怨霊となった伝説、及び交流のあった在原業平が恋人を鬼に攫われる伝説を引き、先の論を両面から支える。また惟喬親王が木地師の祖と語られていることも見逃せない。一方で木地師・大工や河原者たちは式神が人と交わった末裔だという伝説もあり、彼らが鬼として惟喬親王らに親近感を持っていたのではないかと示唆する。
ここから焦点は式神や護法にスライドし、いよいよ鬼がおにと呼ばれるに至る。護法童子から童形の持つ呪術的な力を見直し、その護法鬼の末裔を自称しアウトロの特権性を活用してきたという八瀬童子に移り、彼らと天皇とのかかわりに戻る。
鬼と中国の鬼神、そのほか鬼との習合を概観し、幸福をもたらすまれびととしての鬼(なまはげなど)を紹介するが、依り来るものには幸も災もあるとしてカミやモノの二面性とその表記としての神・鬼・物を論じ、鬼は荒魂やまつろわぬカミ・モノに当てられた字であるとする。タマはカミやモノから分離して働く性質のことであり、ミサキとはそのタマであるとも言う。最終章では鬼が境界に属し「かくれ」て「あらわれる」ものであることに着目し、鬼の象徴である蓑笠と、それを用いる諸々の儀式は鬼の力を借りる「再生の呪術」であった。
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2009年05月12日

「琥珀捕り」

キアラン・カーソン 東京創元社/海外文学セレクション

 アイルランドの昔話の類まれなる語り手であった父に思いを馳せながら、私は語り始める。お相手はオランダ人のボス氏と、ポーランド人のヤルニエヴィッチ氏。気ままにつなげられていく話題は、聖人の泉から捕れる宝石「琥珀」の周囲を巡り、水を媒介にしてアイルランドとオランダを結び合わせていく。聖人が並び、絵画を精査し、潜水艦や顕微鏡の発明者が名乗りを上げ、オウィディウスの『変身物語』が自在に引用される。主題の連結と変奏の網目。

 父親のお話の思い出から始まった物語は徐々に広がり、途中から別の語り手も加わっていく。物語についての物語は空間的には世界の全体、時間的には神代のから近代までと視野を拡大し、フェルメールの『絵画芸術』と対面するプルーストに到達したことで自己言及を飲み込んで己自身もループさせる。そう見えた気がしたのだが、こういうこじつけはどうだろう。民話神話をくだけた口調で訳してあるのが楽しい。絵画や発明についての薀蓄が非常に好みでカーソンさんも好きねえなどと言いたい。
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