2009年05月12日

「琥珀捕り」

キアラン・カーソン 東京創元社/海外文学セレクション

 アイルランドの昔話の類まれなる語り手であった父に思いを馳せながら、私は語り始める。お相手はオランダ人のボス氏と、ポーランド人のヤルニエヴィッチ氏。気ままにつなげられていく話題は、聖人の泉から捕れる宝石「琥珀」の周囲を巡り、水を媒介にしてアイルランドとオランダを結び合わせていく。聖人が並び、絵画を精査し、潜水艦や顕微鏡の発明者が名乗りを上げ、オウィディウスの『変身物語』が自在に引用される。主題の連結と変奏の網目。

 父親のお話の思い出から始まった物語は徐々に広がり、途中から別の語り手も加わっていく。物語についての物語は空間的には世界の全体、時間的には神代のから近代までと視野を拡大し、フェルメールの『絵画芸術』と対面するプルーストに到達したことで自己言及を飲み込んで己自身もループさせる。そう見えた気がしたのだが、こういうこじつけはどうだろう。民話神話をくだけた口調で訳してあるのが楽しい。絵画や発明についての薀蓄が非常に好みでカーソンさんも好きねえなどと言いたい。
posted by 魚 at 01:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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