2009年05月28日

「太陽の帝国」

J・G・バラード 国書刊行会

上海の外国人租界で暮らすジムは見知らぬ祖国イギリスよりも上海で睨み合う中国と日本に親しみを感じる。太平洋戦争の開戦とともに両親とはぐれたジムは戦時下・収容所という世界に適応していく。

先日お亡くなりになったのでそういえば長編読んだことないし読む。バラード自身の戦争体験をベースにしているらしいので、それを飛行機・彼岸の光・富裕層の廃墟・滅びた世界といったお馴染みのガジェットを使って再構成してみせた感じか。終戦直後の混沌の中、ジムはひたすら自分にとって唯一生きている場所である収容所へ帰ろうとする。それは一人の人間として生きる術を学んだ場所というだけではなく、死を実感した場所でもあるから。海に流された棺と弔いの紙の花が滞留する上海沿岸から始まってループするイメージは純度を高め、死んだ特攻隊の少年兵や行方知れずの両親たちをよみがえらせ、収容所の自分の区画に迎え入れようとする幻想にまで到達する。長かったけど感想としては楽しかった。
posted by 魚 at 17:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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