2009年06月20日

「ハイ‐ライズ」

J・G・バラード 早川書房/ハヤカワ文庫SF・377

 四十階建て超高層マンションに暮らす人々が階の高さに応じたヒエラルキーを作り、その「社会」構造が遷移していく様子を描く。主な登場人物は下層階のテレビプロデューサー・ワイルダー、中層階の医師・ラング、最上階の建築家・ロイヤル。
 追悼の一区切りとして読んだ。『クラッシュ』『コンクリートの島』からなるテクノロジー三部作の一つ。ただの無法状態ではなく、みなが暗黙のルールに則り、かつ外部に対しては一致して何事もないかのように振舞うというメタルールが中々秀逸。ただの俗悪な大騒ぎ、退行的な人間ドラマではなく、人間離れした論理、まるで異星の生態系を見ているような面白さがある。大体どの人間関係でも男女の性愛関係が焦点となるのもその動物的な印象を補強している。社会に潜んだ異形の生命が、人間の肉体と文化を苗床に現出してくるという異界の進化史。力と権力をふるい混沌の中で欲求を追求してきたワイルダーたち三人が矮小化し、女性の拡大家族のもとにマンションの秩序が再構成されるというのもおもしろい。
posted by 魚 at 00:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。