2009年06月20日

「まっぷたつの子爵」

イタロ・カルヴィーノ 晶文社/文学のおくりもの・2

テッラルバの領主の息子メダルドはトルコ軍との戦争で砲撃を受け、体が真っ二つになってしまう。奇跡的にも命を取り留めたが体は縦にまっぷたつ。しかも人間ならば善悪併せ持つはずの心までまっぷたつになり、邪悪の権化として帰還してきたのであった。危険な悪戯から暴政までフル活用でテッラルバの住人を苦しめるメダルド子爵だが、そこに現れた流浪の聖人君子。案の定というか、こちらはメダルドの「善い半分」だった…。

『穴掘り公爵』を読んだ流れで。
山賊、らい病患者や異端宗派のゲットーなど、田舎の村が抱えた問題を純粋な善・悪と化してしまった子爵(たち)がぞくぞく掘り起こしていく。また中心にある善悪の寓意のみならず、信仰、快楽、技術、親の愛エトセトラについて風刺を放つという盛り沢山な一遍である。
寓話めいたドタバタでありながらも、さりげなく語り手の少年の成長物語でもあるのは「語り手」の介在を重視するカルヴィーノならでは。子爵家の血縁であり孤児である少年は居場所がなく、代わりに村内を自由に行き来する語り手である。しかし臆病で夢想家だった友人の博士は物語の起承転結に関わってしまい、そして船医に戻り村を去っていってしまう。これまで自由な視点であった少年は、不安定な若者として取り残され、悲痛な叫びを上げる。そこで読者と重ねるのはできあいにすぎるかもしれないけど何かグッときた。
posted by 魚 at 13:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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