2009年06月29日

「ぼくは行くよ」

ジャン・エシュノーズ 集英社

 微妙な美術商フェリックス・フェレールは「ぼくは行くよ」と言い捨てて妻のもとを去り、今は行きずりの関係を繰り返しつつ大プロジェクトを構想中。それはアシスタント、ドラエの提案による、北極圏で原住民の装飾品を積んだまま座礁した船の探索と回収。ところがドラエは出発目前に急死してしまう。事態の裏側で不穏な行動を取る男ボムガルトネールもいるがフェレールは知るよしもない。果たしてプロジェクトとフェレールはどうなるのか。

 と言っても派手な活劇とかではなく、要するにフェレールの人生から「いろいろ大変だった時期」を切り取った小説。エンターテイメントではない。三人称小説でありながら作者の介入があり、それが物語と不思議な距離感を作っている気分。潜伏生活は退屈だからはしょろうとか、やっぱり作者も彼だと思っていたとか、小粋な冗談を交えて実はかなり波乱万丈な出来事をトボけた語りでふわふわと読ませてしまう。人生の悲喜交々を軽くマイルドに書いた一本だろうか。北極旅行やボムガルトネールの暗躍よりも、気があるのか何だかよく解らないのに接近してくる女性のほうが深刻に思えるあたりそれっぽい。
posted by 魚 at 12:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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