2009年07月27日

「アーサー王ここに眠る」

フィリップ・リーヴ 東京創元社/sogen bookland

アーサー王伝説が、実は「マーリン」がイングランド統一の悲願ため世に流した一種のプロパガンダであったら、という物語。領主の屋敷をアーサー一味に焼き討ちにされ命からがら逃れた奴隷の少女グウィナは、吟遊詩人ミルディンに拾われ、何故か気に入られて弟子になる。襲撃と恐喝を繰り返しながら邁進するアーサーのブレインとして、「マーリン」と「湖の貴婦人」として、アーサーを王とするための伝説を作り上げていく彼らだが。
史実、異本、マビノギオンなど多様なソースを渉猟して「真相」をつづり、辻褄あわせは「だって最初から出任せだから」という身も蓋もない説明でけっとばす。とにかく面白くなるようエピソードを限界まで突っ込んであるのだから当たり前のように面白く、しかもメインは少女の成長物語なのでめっぽう面白い。矮小で場当たり的な出来事のツギハギがあの勇壮な物語になっていく様に舌を巻き、「ランスロットの裏切り」や「聖杯」のショボいんだけど人間味のある顛末にしみじみする。状況に翻弄されていたグウィナが、ミルディンの死を経て自分で物語りはじめる終盤はまさにヴィルドゥングスの王道。
蛇足。
というか大事なのは主人公のグウィナが男装して騎士団に混じっているという設定ですよ。脇を固めるのも、策士過ぎて常に行動が裏読みされ好意を受け取ってもらえないマーリンとか、女の子として育てられ騎士になってもヒロイン体質のパルジファルとか、リーヴ先生はじまってたんだな。そして『果たしてミルディンの人生に意味はあったのか/物語とは何か』という問いを提示しつつ希望を繋ぐ結末に、なんだかとても良質の二次創作的テクニックを感じてしまったのは自分だけですか。
posted by 魚 at 13:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。