2009年07月29日

「素粒子」

ミシェル・ウエルベック 筑摩書房

時は戦後、西洋文明が大きな規範から個人主義へと大きく舵をきりながら、そのまま性と資産の争奪戦へ沈没しつつあった時代。「発展的」な母親によって世に産み落とされ、時代のエッジを行くことになる異父兄弟がいた。兄ブリュノは非モテをこじらせて下半身で考える文学青年くずれとなり、弟ミシェルは恋愛や愛欲の結びつきを理解できない非コミュ理系となった。愛ゆえに苦しまなくてはいけない人間の未来は愛か解脱か、そのときすべては二人の生き様のぶつかりあいにかかっていたかというとそうでもなく、二人の残念な人生を通して現代を要約するとかそういうの。
社会を統合し条件付けるものとしての思想原理と宗教の衰退について議論し、60~70年代をばっさり切り捨てたりと過激なことをやりながら、登場人物レベルではどこまでもシモくて卑近。時系列を前後しながら、ミシェルとアナベルのすれ違いは案外さらっとながす一方で中年になってニューエイジ系セミナーにナンパにきたブリュノがうろうろする様子は何かみっちり書く。ちょっとうっとうしいけど、終盤色々失ったミシェルが新時代の哲学の種を撒く段になるととたんにアイルランドの自然の美しさとか語り出すのだから驚く。未来人が出てくると聞いて手に取ったのだが斜め上だった。SFっぽい部分については(ゲノム解析と利用についての認識がシンプルすぎるのは置いておいても)生物物理学的な解決法を使うとは上手いホラの吹き方で評価したい。
posted by 魚 at 01:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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