2009年08月04日

「ポトマック」

ジャン・コクトー 河出書房新社/河出文庫/澁澤龍彦コレクション

僕は『ラ・マルセイエーズ』や『恋の愉楽』を書くこともできたかもしれないのに、と前置いて始まる詩人の疾走。恋人や友人たちとの戯れ、あるいは無意識から湧き出す妖怪や、水族館の幻獣たちと言ったこれ見よがしなナンセンス。死や停滞から逃れるように危ういバランスを求め、詩作を綱渡りにたとえて宙を歩きたいと語る。ただし後から書かれた前置き・後書きの存在によって、熱意や無邪気さがそのまま諦念やノスタルジーっぽく染まって跳ね返ってくる。何か始終切ない。

この本全体に均衡を保たせるために、僕は、文章と言葉の継起する束の間の均衡を、一つ一つ求めていくわけだ。
要するに、綱渡りだ、下には空虚がある。
邪魔者さえなければ――一歩一歩綱を踏んで、反対側の壁へ――渡りつくことができる。
空虚の上には、いつも一本の綱がぴんと張られている。
熟練とは、卵を踏んで進むように、死の上を進むことにある。
posted by 魚 at 02:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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