ダン・ガードナー 早川書房
確証バイアスや係留規則など、人間の推測・判断が先天的に持つ非論理性については『脳はありあわせの材料から生まれた』なんかの本で読むことができる。最近の流行なのかもしらん。さて、著者はそれら進化心理学の知見に基づき、人間の非論理的な偏見のなかでも「恐怖」がいかに影響力が強く、そして広く利用されているかを説く。これが前段。そして現代の「恐怖」たちがリスク評価として適正かを詳細にチェックしていく。つかみとして911テロ直後、大量の通勤客が飛行機を避けて自動車に切り替えたため、事故死者が千人以上増えた可能性があるという計算を紹介。大体そういうノリで、諸々の恐怖について直感と統計を比較し、また現実におきた事例を検討していく。ネット上の性犯罪者、化学物質恐怖や癌、伝染病、原子力、環境問題、テロ、政治。多種多様な防犯と自衛のための商品や、広告業界、選挙コンサルタントの手口なんかにも触れる。全部読み通すのはしんどいが、要するに結論としては「とりあえず落ち着け、今ほどよい時代はない」ということである。