2009年09月08日

「ミラーニューロンの発見」

――「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学
マルコ・イアコボーニ 早川書房/ハヤカワ新書juice・002

神経科学のメッカはイタリアにあるらしいですね。というわけで神経学/神経生物学の実験者である著者が、「ミラーニューロン」と名付けられた細胞と、そこから期待される展望について色々。人間では言語野などに存在し他者の行動を見るだけで自分も行動しているように反応する「運動ニューロン」。それは単なる学習の結果なのか、それとも学習を可能にするインフラなのか。また認知のためなのか、さらに進んで「共感」や「意思」のような抽象をコーディングしているのか。少なくとも知覚―認知―行動という基本的な「メカニズム」の概念の破壊するものである、と言う。ミラーニューロンの働き、ミラーニューロンと共同して働く部位の機能、模倣や共感が価値判断に与える影響などなど。生理学的な実験から、社会病理まで話は及ぶ。とはいえ中心にあるのは、人間は「心の理論」に基づくシミュレータではなく、他者の感覚を直接自分の身体に映し出す「ミラー」を持っているのだという点。人間がいかにシンプルかつ自動的で、感じているままの存在であるか。曰く、これぞ実存主義的神経学だとか。
昔自分で読んで印象深かった「ミーム・マシーン」なんかを援用してきて、模倣行動の重要性について論じるあたりは楽しい。もう一つのポイントはfMRIや磁場で脳の局在機能を抑制するなど最新の実験・観察システムをガンガン使ったり、発達心理系が専門らしい奥さんやマスコミ企業と組んで色々研究設計したりするところ。心理系の行動実験は気分的にちょっと眉唾になるが、こうもどんどんやってさくさく論を進めれたらさぞ気持ちよいだろう、と嘆息。
posted by 魚 at 09:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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