2009年09月08日

「機械という名の詩神」

――メカニック・ミューズ
ヒュー・ケナー 上智大学出版/SUPモダンクラシックス叢書

第一章 エリオットは観察する
第二章 パウンドはタイプを打つ
第三章 ジョイスは書写する
第四章 ベケットは思考する
補遺―科学、アクセル、地口

技術(機械)を切り口にしたモダニズム文学の評論であり、また当時の技術認識を探るものでもある。ロンドンの機械化された都市生活を切り取り、リミックスしてみせるT・S・エリオットの観察眼から始まって、「技術」は文芸そのものの技術へ、人間そのものの技術へと拡張されていく。機械のメカニズム、設計思想を美と見なしたエズラ・パウンドの理念。印刷物とナラティブを類別し、その差異を活用したジョイスの文章。しめくくりは役者を束縛し、読者の思考を指示するベケットの統語論的人間観。エリオットの修辞にレポートに追われる学生を見たり、ベケットの一節をプログラミング言語で書いてみせたり、パフォーマンスもなかなか愉快。補遺は、文章技巧と思想の連関について、修辞法を宗教的堕落とした17世紀から、逆に散文を退化とした象徴主義運動まで。
前提としてベケットを少し読んだくらいなので納得とまではいかないがなかなか面白かった。

一、受け手。この受け手は、サッフォーの聴衆のように詩の朗詠を聞くことができるだけでなく、詩を見ることができる資質を求められてる。二、筆記者(現在でいう印刷業者)。筆記者は、視覚に関する指示を正確に再現できること。三、詩人が仕事部屋で詩を創作するときに、じっさいに印刷される形にかぎりなく近い形を再現する方法。つまり、「回帰」は、タイプライターなしには創作されえない詩という二十世紀に登場したジャンルの初期の一例なのである。
posted by 魚 at 09:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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