2007年02月05日

「ババ・ホ・テップ」(短編)

ジョー・R・ランズデール (早川書房・ミステリマガジン2007年1月号収録)

 「プレスリーvsミイラ男」が面白そうだ。《あらすじ:現代に蘇ったミイラ男が、郊外の医療老人ホームで老人たち次々殺害。そのホームに入居しているエルヴィス・プレスリー(かつてソックリさんと入れ替わったそうな)は、自分をJFKと信じる友人と一緒にミイラに立ち向かう》……バカすぎる。で、その原作中篇がミステリマガジンに掲載されているということで、読んでみた。図書館にあったので。
 どんなバカな話かと思いながら読んでみると、意外なことにマトモな話。設定はバカだけど、ノリはおちゃらけているわけでなく、死にかけ老人達のもはや笑うしかないほどに悲愴な「生活」や友情がしっかり描かれる。けっこう重いトーン。そもそもミイラに立ち向かうのも、ミイラに魂を食われてしまうえば死後の世界や転生の可能性すらなくなって、希望も何もなくなってしまうから。もはや生きていることに意味を見出せない老人は、自分や友人達の安らかな眠りのために闘う。想像していなかった方向から攻められてうっかり陥落。所々入る下品なネタも、むしろ主人公の存在を生生しく表していてちゃんと生きている。
 敵役の「ミイラ」も、バカなのかちゃんとホラーしようとしているのか判別しがたいアイデアの塊で、でもそれがことごとくツボにハマった。鳥のような亡霊(元ネタは「バー」だと思うたぶん)を引き連れていたり、現代人の姿を学習しているからTシャツにジーンズ姿だったり、喋る言葉がヒエログリフとして具現化したり。こういう変なバランス感覚はとても好みです。最後もカッコつけてんだか間抜けなんだか、まさかデタラメヒエログリフをあんなキレイに使うなんて!
 なんかもう続編の企画も上がってるらしいから、あの感動的なエンディングはないってことだろうけど、まあそれもまたよし。面白く映画化されているといいな。
posted by 魚 at 22:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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