ロン・グーラート 扶桑社・扶桑社ミステリー
広告代理店で働くマックス・カーニイは、趣味でオカルト探偵をやっていた。趣味なので依頼人は友人とか、友人の知り合い。ゾウに変身する青年、新居を襲うポルターガイスト、転職を妨害する魔法使い、友人達を悩ませる超常現象の数々に、マックスは如何にして立ち向かうのか!?
……これ以上はないってくらいに気軽に読めるユーモア連作。この力の抜け具合、僕は好きだ。ただ、珍妙な現象が起こって珍妙な原因が判明して……ってとこまでは面白いんだけど、クライマックスはどうも淡白であっさりしている、ていうかクライマックスになってない。事情がわかって対抗魔法がわかったらそれで解決。スリルも活劇もなく3ページくらいで終わる。それはまあ別にいいんだけど。途中から登場する奥さんが活躍しないのは残念かな。扱いがワンパターンだし。
スリルとか活劇はあまりないけれど、何故かところどころ社会風刺が盛り込んであるのが特徴。
以下あらすじっぽいの。
「待機ねがいます」 祝日になるとゾウに変身してしまう青年。
「アーリー叔父さん」 テレビやラジオに現れて、姪っ子との結婚をすすめる幽霊。
「撮影所は大騒ぎ」 あるドラマを、撮影や脚本から妨害する幽霊。
「人魚と浮気」 夫にかけられた人魚との浮気疑惑。
「カーニイ最後の事件」 有能なタイピストが転職してしまうことを妨害する魔法企業。
「新築住宅の怪異」 新居のあちこちに動物が現れ、クローゼットの中にメイプルシロップが滴る。
「あの世から来たガードマン」 保守派の活動家に弾圧される慈善病院を守るため、あの世からやってきた用心棒。
「幻のダンス・パビリオン」 異常なほどドジになった夫、そして庭に現れるダンス・パビリオン。
「姿なき妨害者」 過激な演劇集団を襲う姿なき妨害者。保守化とか、表現の弾圧とかそのへん。
メインのネタもおかしいけれど、筋肉的思考を奨める哲学者にして霊媒師もやっているプロレスラーとか、「家電製品と心を通じ合わせることを説く自己啓発セミナー」とか、周辺のネタもやたらと変。