2009年08月26日

「忘却の惑星」

ドナルド・A・ウォルハイム&テリー・カー 編 早川書房/ハヤカワ文庫SF<285>

うーん、これがThe World's Best Science Fiction 1966なー。ちょうどニューウェーブが始まったころじゃなかったっけ?
「太陽からの風」アーサー・C・クラーク 既読。
「時計じかけの医者」ロン・グーラート 見舞いに訪れた病院に入院させられた男。ロボ医者がいい味出している。
「地獄で立往生」ラリイ・ニーヴン 既読。
「居留区」ヴァーナー・ヴィンジ 戦争により北半球の諸国家が壊滅した未来、南極で発見された人々のルーツとは。解説には政治的スタンスによりアナログ誌にはウケなかったと書いてあるけど、アナログが保守っていうよりこの短篇の表現はさすがに直截すぎるっていうか。ギャグ?
「河を渡って木立をぬけて」クリフォード・D・シマック 田舎暮らしの老夫婦を訪ねてきた見知らぬ子供たち。シマックの代名詞である田舎が横溢している。他の時代・他のSF作家なら別に田舎にしないだろうに、田舎。
「忘却の惑星」ジェイムズ・H・シュミッツ いくら昔のSFだからと言って、タイトル作品でまさか惑星間国家が秘密レポートの書類入れを巡ってスパイごっこしてるとは思わなんだ。しかもSFとは関係ないどんでん返しも仕込んであるとか、これはむしろ新鮮。
「「悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった」ハーラン・エリスン 既読。
「決断者たち」ジョゼフ・グリーン 地球の植民地対象になった惑星の原住民との交渉。今読むと環境改造計画の大雑把さに笑ってしまう。ていうか最初から地球みたいな環境なのに。
「旅人の憩い」ディヴィッド・I・マッスン 場所によって時間の流れ方の違う世界で暮らす人々。設定押しだけど結構よかった。
「未収録作品」リン・カーター シェイクスピアを打つサルを曲解したホラ話。
「消失点」ジョナサン・ブランド 宇宙人との会談のために作られた小世界の秘密。若干無理がある気もするが語り口や設定の捻りはちょっと楽しい。
「うちの町内」R・A・ラファティ 既読。
「赤色偏移の仮面」フレッド・セイバーヘーゲン バーサーカー退治の英雄を巡り、陰謀家の王とバーサーカーの板ばさみになった宇宙船の船長の話。だから別に宇宙じゃなくてもよいような話を。
「とらわれの魔神」クリストファー・アンヴィル 異星人に収監された地球人が(理科実験レベルの)策を弄して脱獄する話。笑い話にしても色々ぞんざいすぎるような。
「新しき良き時代」フリッツ・ライバー 複数の職業を持つことがステータスである未来、ダメ人間揃いの兄弟と彼らを叱咤激励する母。卑近でスラップスティックなノリなのでそれほど古くない。
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「砂漠の惑星」

スタニスワフ・レム 早川書房/ハヤカワ文庫SF<273>

遭難した宇宙船コンドル号の調査のために、砂漠の惑星に赴いた無敵号。バリアや戦車を積んだ戦闘艦をボロボロにし、乗組員たちを狂死させた未知の脅威とは果たして何なのか。
脅威の黒雲が渦を巻き、核武装戦車が咆哮するSFなスペクタクルをエスカレートさせる一方で、副長・ロハン君が老獪な司令や科学者たちと軋轢しては葛藤し、人間と砂漠の惑星の「最終決戦」に一人で挑むように仕向けられていく。この心理描写と構築がまさに巧みであり、テーマを語る技術に舌を巻く。客観的には最初から最後まで砂漠の惑星に人類は押されっぱなし、ただ現場調査や二次遭難の救助をしているだけなので防戦ですらないのだけど、最後には感動が待ち受けている。精神論ではなく実のある人間の勝利。この機械たちは多分「ソラリス」の海と「ピルクス」が巻き込まれる事故をブリッジするもので、立ち向かうべき「未知」の陥穽は人類が人間として処理すべき事件一般である、という方向を示していると思う。さておき、闘争による機械たちの直線的な発展を生物学っぽい雰囲気で「進化」と呼ぶのはちょっとひっかからなくもないんですが気にしすぎか。
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「がんばれチャーリー」

ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスン 早川書房/ハヤカワ文庫SF<791>

惑星ニュー・レムリアで休暇を過ごす少年チャーリー・スチュアートは、ホーカ人家庭教師の暴走と、切れ者の地方領主の策謀により、革命に巻き込まれることになる。
ご存知「見立て」「なりきり」を本性とし、西部劇やったり外人部隊やったりする奇妙な宇宙人、ホーカを巡るシリーズ。の長編。宇宙人相手の政治的状況をエンターティメントに見立てられるという時点で既に作者の恣意的な関与が行き過ぎなわけだが、そこを見立てそのもののインパクトで突っ込めなくするという画期的アイデアによる連作である。ここではたぶん中世英国をイメージした惑星を舞台に、予言の王子にしたてられた地球人少年の友情あり陰謀ありの冒険もの。何故か惑星国家が前近代の欧州ノリだったり、星間組織のスタンスがアメリカ的だったりしても突っ込んだほうが負け。でもそこまでやって冒険に真剣見がないというか、あまり盛り上がらないのはどうかと思うんだ。
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2009年08月21日

「セックス・スフィア」

ルーディ・ラッカー 早川書房/ハヤカワ文庫SF<973>

先の無い数学者アルウィン・ビターは休暇に訪れたローマで誘拐されテロリストに売られ核爆弾を作るハメになったが、狂人ラフカディオに託された謎のセックス・スフィアの力によって脱出した先は四次元空間。
おなじみの構成要素を濃縮したラッカー中のラッカーといわんばかりの何か。超SFな手段を手に入れたダメ男、それを締める奥さんor恋人、ポップな振りして妙に生々しく残酷な事件、歴史や文学からのたぶん深い意味の無い引用(今回は『神曲』)、無いプロット、そして「すべてはひとつ」のドグマ。時空連続体から漂い出していくけど奥さんが錘になって引き戻されるとか身も蓋もなさすぎる。作風紹介には手っ取り早い気がする一方で、これは小説というよりただの力技なのでやっぱりウェアシリーズが代表作なんだろうな。ただ爽快。
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「わが名はコンラッド」

ロジャー・ゼラズニイ 早川書房/ハヤカワ文庫SF<178>

人類がより進歩した宇宙人(ベガ人)の文化圏に身を寄せる未来。地球は怪物が徘徊する荒廃した世界で今や観光地と化している。主人公・コンラッドは地球美術遺蹟史料保存局局長であり、ベガ人ミシュチゴの指名で地中海世界をガイドすることになった。地球人の富豪たちも参加するそのツアーは、地球の運命を左右する重要なものであるらしい。
ギリシャ神話を下敷きにしているらしいが、場所がそのまんまなこと以外はイマイチ解らなかった。半神英雄の放浪と戦い、というと解らんでもないんだけど。ググってもこの作品絡みの記述しか出てこない「カリカンザーロイ」(察するに半人半獣の妖怪?)とやらがポイントなんだろうか。とりあえずプロットはお役所の局長といいながらタフで過去に秘密を持つ男コンラッドが、あちこち行っては暗殺者と戦い、怪獣と戦い、人食い人種と戦いしながらツアーの謎を偶に考えるくらいなので素朴に楽しい。ヒロイックファンタジーと称されるらしいが、むしろハードボイルドものっぽい。でも展開やキャラクターが何か優しいあたりゼラズニイである。他にも味のあるキャラクター、変なアイデア(フレイザーをテキストにして儀式を行う『人食い人種』とか)とからしさが盛り沢山で満足。
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「さようなら、ギャングたち」

高橋源一郎 講談社文芸文庫

人々が互いを名付けあう世の中で、詩人である私「さようなら、ギャングたち」は恋人「中島みゆきソングブック」、飼い猫「ヘンリー4世」と暮らしている。
詩の教室で、言葉に悩む人々と一緒に頭を捻る主人公と、大した言葉も持たないまま世間を騒がす不死身のギャングたち。互いが互いを名付けるということは恋人同士の冗談である一方で、わたしのように自分でも解らない含意があることもある。アイデンティティの規定というと違う気もするけどこの小説は同名なので、やはりそのあたりを言葉(による表現)というガジェットに託している気がする。
第二部は一番気軽に楽しめる部分だけどその分一番印象が薄い。それを言えば何が何処まで必要か、はっきりつかめていないのだけど。そういえば読んでいる間、これの前に読んだ『うたかたの日々』のオマージュくさいところ(娘の死のくだり)が気になっていて、なんていうか、些細な言葉ばかり気になって身動きがとれなくなるタイプだと改めて反省。
posted by 魚 at 21:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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